スケーリング・ルートプレーニングとは何ですか?

皆さんは歯周病の治療について、どのくらいご存知でしょうか。歯科医院で「歯石取り」を受けたことがある方は多いかもしれません。しかし、実際に受けた処置がどのような意味を持つのか、詳しく説明を受けたことはありますか?

今回は、歯周病治療の基本となる「スケーリング・ルートプレーニング(SRP)」について、専門医の立場から詳しく解説いたします。

スケーリング・ルートプレーニングの基本概念

スケーリング・ルートプレーニングは、歯周病治療における最も重要な基本治療となります。この治療は二つの処置を組み合わせたものです。

スケーリングとは、歯の表面に付着した歯石やプラーク(歯垢)を除去する処置です。

ルートプレーニングとは、歯根の表面を滑らかにして、細菌が再び付着しにくい環境を作る処置となります。

あなたは歯石がどのような害をもたらすか、ご存知でしょうか。歯石は単なる汚れではありません。歯石の表面はざらざらしており、新たな細菌の住みかとなってしまいます。

歯周ポケット内での細菌の問題

歯周病が進行すると、歯と歯ぐきの間に「歯周ポケット」という深い溝ができます。このポケットの中に歯石が形成されると、どのような問題が起こるでしょうか。

歯周ポケット内の歯石は、歯ブラシでは絶対に除去できません。また、この部分には酸素を嫌う嫌気性細菌が繁殖します。これらの細菌が出す毒素によって、歯を支える骨が溶かされてしまうのです。

当院では、この歯周ポケット内の徹底的な清掃を重視しています。なぜなら、表面だけをきれいにしても、根本的な問題は解決しないからです。

治療の具体的な手順

スケーリング・ルートプレーニングは、どのような手順で行われるのでしょうか。

まず、歯周組織の精密な検査を行います。歯周ポケットの深さ、出血の有無、歯の動揺度などを詳しく調べます。この検査結果に基づいて、治療計画を立てることになります。

実際の処置では、専用の器具を使用して歯石を除去します。手用器具(キュレット)と超音波器具を使い分けることで、より効果的な治療が可能となります。

処置中の痛みについて、心配される方も多いでしょう。当院では、必要に応じて局所麻酔を使用いたします。患者さんの負担を最小限に抑えながら、効果的な治療を行うことを心がけています。

治療期間と回数について

スケーリング・ルートプレーニングは、一度に全ての歯を処置するのでしょうか。

実は、効果的な治療のためには、お口の中を4〜6つの部分に分けて処置します。これを「分割治療」と呼びます。一度に広範囲を処置すると、患者さんの負担が大きくなるだけでなく、治療効果も下がってしまうからです。

各回の治療時間は約60分程度となります。治療間隔は1〜2週間空けることが一般的です。なぜこの間隔が必要なのでしょうか。処置した部位の治癒を待つためです。

プラークコントロールの重要性

スケーリング・ルートプレーニングを成功させるために、最も重要なことは何でしょうか。

それは、患者さん自身によるプラークコントロールです。いくら歯科医院で完璧な処置を行っても、日常のケアが不十分では効果が持続しません。

当院では、プラークコントロールレコード(PCR)が20%以下になるまで、スケーリング・ルートプレーニングを開始しないことも多いです。なぜこのような方針を取るのでしょうか。

歯ぐきの炎症が強い状態で処置を行うと、正確な診断ができないからです。また、処置後の治癒も不良となってしまいます。

治療後の経過と再評価

スケーリング・ルートプレーニング後は、どのような経過をたどるのでしょうか。

処置直後から歯ぐきの炎症が徐々に改善し、歯周ポケットが浅くなってきます。完全な治癒には約4〜6週間かかります。この期間を経て、再評価検査を行います。

再評価では、歯周ポケットの深さ、出血の有無、プラークの付着状況などを詳しく調べます。この結果により、今後の治療方針を決定することになります。

治療が成功した場合、サポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)という定期管理に移行します。治療効果が不十分な場合は、歯周外科治療を検討することもあります。

注意すべき副作用について

スケーリング・ルートプレーニング後に起こりうる変化について、事前にお伝えしておきます。

知覚過敏が一時的に起こることがあります。これは歯石除去により歯根面が露出するためです。多くの場合、数週間で改善いたします。

また、歯ぐきの退縮により、歯が長く見えることがあります。これは腫れていた歯ぐきが健康な状態に戻ったためです。決して悪い変化ではありません。

当院での治療へのこだわり

当院では、どのような点にこだわってスケーリング・ルートプレーニングを行っているでしょうか。

まず、**十分な時間をかけた丁寧な処置**を心がけています。急いで処置を行うと、取り残しが生じる可能性があります。また、オーバートリートメント(過度な処置)にも注意を払っています。

患者さんへの十分な説明も重要です。治療の意味を理解していただくことで、その後のプラークコントロールへの意識も高まります。

さらに、当院では日本歯周病学会の専門医・指導医や日本臨床歯周病学会認定衛生士による高度な技術と豊富な経験を活かした治療を提供しています。

まとめ

スケーリング・ルートプレーニングは、歯周病治療の基礎となる重要な処置です。しかし、この治療だけで歯周病が完治するわけではありません。

最も大切なのは、患者さん自身による継続的なプラークコントロールです。歯科医院での専門的な治療と、ご家庭でのセルフケアの両方が揃って初めて、良好な結果が得られるのです。

あなたの歯ぐきの状態はいかがでしょうか。歯磨き時の出血や歯ぐきの腫れを感じることはありませんか。気になる症状がございましたら、お早めにご相談ください。

当院では、患者さん一人ひとりの状態に応じた最適な治療計画をご提案いたします。健康な歯周組織を維持し、生涯にわたって自分の歯で噛める喜びを実感していただけるよう、全力でサポートさせていただきます。

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