近年、予防医学は社会的にも多くの分野で注目されています。

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予防医学とは、いったい何でしょうか

わたしたちはこう考えています。

むし歯や歯周病などは、いきなり病気になるのではありません。

そうしたリスク(危険性)があって、はじめて病気になるわけです。

つまり、「リスク→病気」という構図です。

これは、あまり歯を磨かなくて、けっこう間食もしているんだけど、むし歯にならない人もいる反面、かなり生活には気をつけていてもむし歯が出来る人がいることの説明になります。前者は、もともとむし歯のリスクが低い人であり、後者は逆に高い人ということができます。

いいかえれば、同じ生活をしているからといってみんなが病気になるかといえば、そうではなくて、リスクによって病気になりやすい人がいるということです。

リスクコントロールをすることが予防医学・予防医療

つまり、リスクが高い人は病気になりやすいわけですから、病気を予防するためには、病気になる前に、検査によってその人のリスクを調べ、リスクが低くなるようにリスクコントロールをすることが予防医学・予防医療と考えます。

これは決して難しいことではなく、患者さんの家庭生活において実現可能な目標を設定し生活改善すること、医院では、定期的に口腔ケアを行いながら、その状況を見守り適宜アドバイスをし、長期的に生活改善が続いていくよう支援します。

当院では、高齢になっても多くの歯を残すということを医院全体の目標のひとつにしていますが、個々の患者さんを定期的に診ていく中で、その患者さんのリスクを3つにわけて考えています。すなわち、むし歯のリスク。歯周病のリスク。咬合力のリスクです。

咬合のリスクのみ聞きなれないかもしれません。これは簡単に言えば、かみ合わせの不良により1本の歯に力が集中して歯が折れたり、割れたりして抜歯になるリスクとでもいえるでしょうか。口の中は、ものを噛み砕く作業場です。6歳ではえる6歳臼歯のあたりでは、

40-50kgの力がかむたびに加わります。また、現代人の咀嚼回数は2000回ともいわれており、6歳臼歯には、かなりの負担がかかっています。たとえるなら、体重40-50kgの人が毎日2000回片足でけんけんしたときに、足首やひざにかかるのと同じ負担が、1年365日休みなく6歳臼歯にはかかるわけです。ですから、その歯が早い段階でむし歯により神経を失い、歯が折れやすい状態になったり、かみ合わせが不良だったりするとかむ力により歯が折れ、抜歯になることがあるのです。

3つのリスク

さて、話を3つのリスクに戻しましょう。

当院では、ご来院いただいた患者さんに「山口歯科医院にかかるようになって、むし歯や歯周病の不具合がなくなって、定期的に通院していたら多くの歯が健康に保たれた」と思っていただけるように、なぜ?を大切に検査をしています。

なぜ、むし歯になったのだろう?なぜここにむし歯ができたのだろう?なぜ、若くして歯周病になったのだろう?なぜ、歯が折れたのだろう?

歯科の病気の原因はひとつではなく、いくつかの要因が重なって病気が起こる多因子の疾患だということがわかっています。むし歯になったから削ってつめてや、ぐらぐらしたり、折れてしまったから抜歯してブリッジや入れ歯では、その原因に対する治療は行われないため、同じ事を繰り返してしまいがちです。

ですから、当院では唾液検査をはじめ、レントゲンもお口全体を10-14枚に細かく分けて撮影したり、口腔内写真、歯周検査、咬合検査、口腔機能検査、酸蝕症問診、タバコ問診、食生活問診などを初診時に丁寧に行い、目では見えないその人のリスクを調べ、それを改善するリスクコントロールを通常の削ったり、つめたり、歯石をとったり、入れ歯を作ったりするのと同様に大切にして診療をしています。

そして、リスクをコントロールしていく主役は患者さんご本人であり、それをサポートするには専門的スタッフ、つまりは歯科衛生士が必要なため、個々の患者さんには担当の歯科衛生士がつき、みなさまとともにリスクコントロールにあたっています。

リスクコントロールについては、初診時の全ての検査後に30分から約1時間、じっくり担当歯科衛生士とカウンセリングを行って、生活改善の予防プログラムをともに作成しています。

その際に、常に注意していることは患者さんの実現可能な目標を設定することです。

患者さんのために

患者さん一人ひとりは、生活者であり、歯のためだけに生きているわけではありません。

1日3回歯を磨くことなど生活のリズムから考えて無理なこともあるかと思います。

われわれが1日3回磨いてくださいねというのは、簡単ですが、それがなされなければリスクコントロールにはつながりません。ですから、カウンセリングの際には、以下のようにしています。

「あなたのむし歯のリスクは、このようなことでした。

これを改善するには、こういう方法がありますが、生活の中に取り入れられそうですか?無理なら代替案として、こんなもありますが、これはどうですか?」

といった風に患者さんの実現可能な目標を設定することを大切に考えています。

リスクコントロールなど行わず、削ったりつめたりしかしない歯科医院と比べると、当然初診時には多くの検査をするため費用がかかりますが(自費の唾液検査3000円+税含む。詳細はこちら⇒)、繰り返し繰り返しむし歯になり、抜歯し、Brや入れ歯になっていき、そのつど費用がかかっていくのと比べれば、初診時に多少費用がかかっても、リスクをきちんとお互いに把握した上で、定期管理を行いながら歯を守り育てていくほうが、長い目で見れば、間違えなく患者さんの人生に貢献できると思っています。