顕微鏡を使う場合(形成・手術・歯周治療・診査診断・歯内療法など)
当院には顕微鏡が5台あります。顕微鏡は、国内・欧米も含め、歯内治療(根管治療)以外で使われることは少ないです。使われるとしても、診査診断、チェックの時ですが、【当院では、歯を削る時や充填処置、歯周外科手術などのときに、施術自体を顕微鏡下で行っています。】
顕微鏡を使用することによって、より精度の高い治療が行えたり、より侵襲の少ない手術が可能になります。
結果として、歯の予後の向上(歯の長持ち)に寄与します。
欠点としては、治療時の顔の向きを維持するのが大変な事、頬を強く引っ張ること、開口量が大きいことなどがあります。
費用についてですが、顕微鏡を使ったからということで自由診療費用は発生しません。
顕微鏡を使った治療費は全て当該治療費に含まれています。例えば、保険内の治療の中で、顕微鏡を使った場合は、保険診療において許された「顕微鏡を使った場合の保険点数の加算」がある場合のみ保険で定められた費用を頂きますが、それ以外は特別な費用徴収はありません。
自費診療で顕微鏡を使った場合も、該当する自費治療、例えばインプラント治療やEMDを使った歯周組織再生療法や自費補綴治療の費用の中に、顕微鏡を使った場合の費用も包括されています。
当院における歯内療法(根管治療)について
当院では、より精度の高い治療のために、形成や歯周外科手術、インプラント手術、歯内療法、充填などのさまざまな場面で顕微鏡を使用して治療を行っています。
PS:すべての治療の場面で顕微鏡を使用しているわけではありません。
歯内療法(根管治療)の目的は、根尖性歯周炎(根尖病変)の予防と治療です。これは、細菌感染によっておこります。
根尖性歯周炎の成功率は、日本の場合、下記のように30-50%程度で極めて低い数字です。
根管処置歯における根尖部X線透過像(=根尖病変)の発現率
調査期間:2005年9月~2006年12月 東京医科歯科大学むし歯外来 智歯は別掲
以上、日歯内療誌 32(1):1~10.2011 わが国における歯内療法の現状と課題 須田英明 より引用
日本の成功率は、後述する海外の専門医の成功率と大きな隔たりがあります。歯内療法を成功させるためには根管内のクリーニング、根管充填、適合のよい歯冠修復が必要ですが、これらはすべて無菌的処置の元に行われなければなりません。つまり、無菌的処置がすべての基礎になければなりません。
しかるに日本では、ラバーダム防湿ですら一般開業医の使用率が5%です。海外では、ラバーダム防湿ができない=根管治療ができないことを意味します。根管治療の分野で世界をリードするペンシルバニア大学でラバーダムなしで根管治療を行えば、それは即退学を意味します。例えるなら飲酒運転のようなものでラバーダムなしの根管治療は、もはや治療ではなく、感染経路の拡大です。
日本で根管治療においてラバーダムを使用しない理由のひとつに保険治療における根管治療の費用が安すぎることがあります。というより、ラバーダム防湿にいたっては保険点数自体ありません。使えば使うほど赤字です。日本で大臼歯の根管治療は約1万円ですが、フィリピンでも約5万円かかります。
諸外国と根管治療を比較
2007年の時点で諸外国と根管治療を比較してみると以下のとおりです。
それでは、無菌的処置の元に歯内療法専門医によって行われた根治の成功率を見てみましょう。
病変のない最初の治療:90%
病変のある最初の治療:80-90%
病変のある再治療:60-70%
Sjogren U,Hagglund B,Sundqvist G,Wing k: Factors affecting the long-team results of endodontic treatment.
Endod.1990 Oct,16(10):498-504
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*Periapical status,quality of root canal fillings andestimated endodontic treatment needs in an urban German
Population.[Endod Dent Traumatol.1997]
*[Long team evaluation of results of endodontic treatments of dentalpulp necrosis(74 cases obturated by the
Monoclonal technique][Dakar Med.1998]
*Succes endodontic treatment of teeth with vital and nonvital pulps.A meta-analysis.[Oral Surg Oral med
Oral Pathol Oral Radiol Endod.2004]
*Longitudinal study ofperiapical and endodontic status in a Danish population.[Int Endod J.2006]
*Assessment of the periapical and clinical status of corwned teeth over25years.[J dent .1997]
このように病変のある再根管治療の成功率は専門医でさえ決して高くありません。予後不良の原因には、①殺菌消毒の不可能な解剖学的、医原的形態②歯根破折③細菌の抵抗性(根尖孔外感染、バイオフィルム、象牙細管)があり、根管治療だけで病変が治らない場合は、外科的歯内療法(歯根端切除か再植)、もしくは、抜歯が適応になります。その成功率は、歯根端切除(歯科用顕微鏡下)で90%、再植で80-90%程度です。
つまり、外科的歯内療法も含めればおよそ90%の根尖病変は治療可能です。
しかし、根尖病変が治るということとその歯が長持ちするということは同じでないことを理解していただく必要があります。歯の長持ち度(歯の予後)は、それ以上に、残存歯質量、破折のリスク、歯周組織の状態、歯冠・歯根比などに強く影響を受けます。したがって、根管治療を行うか否かは、費用対効果も加味して決定されるべきものです。
根管治療において、無菌的処置がすべての基礎にあると述べました。
特に再治療の感染根管治療の場合には、感染源を根管の中から徹底的に除去しなくてはなりませんが、この作業はいわば暗闇の中を手探りで掃除をしているようなものです。ここで威力を発揮するのが顕微鏡です。顕微鏡を使えば、まず、根管の中を明るく照らしながらお掃除ができるだけでなく、最大、20倍近くまで拡大して見る事ができます。