~開院の精神~

わたしは、お口を生涯、健康に保ち、よく食べ、よく話し、よく笑う生活をしたいと願う人々を専門的立場からサポートするために、2008年7月1日、この医院を開院いたします。

みなさん、こんにちは。院長の山口將日(まさひ)です。

私は高校3年のとき、「人間の健康といのちの役に立つ仕事をしたい」との思いから歯科医師を目指しました。

以来、その気持ちは全くゆらぐことなく、心の中に息づいています。

平成10年に縁あって妻とめぐり合い、娘婿として当地に参りました。

以来10年間、義父の指導のもと勤務してまいりましたが、診療所を新築するのを機に、平成20年7月1日より、3代目院長となりました。

17歳に抱いたあの思いを、実現し続けられるよう院内のシステムや医院設計にも工夫を凝らしました。

当院の目標は、『高齢になっても多くの歯を残し、口腔機能を生涯維持することを通して患者さんのQOLに貢献する』ことです。

みなさんは、きんさん・ぎんさんを覚えていますか?そうです。100歳の双子のおばあちゃまたちです。

お二人の元気でかわいらしい姿がよくテレビに出ていましたね。あの方たちはお二人とも総入れ歯だったそうですが、なんでも食べられ、お元気でした。

1999年の歯科疾患実態調査という全国調査を見ると、80歳の方の6割以上が総入れ歯だそうです。

それでも、きんさん・ぎんさんのようにお元気で、なんでも食べられるのならいいじゃないと思われる方もいると思います。

私も、日々の仕事が本当に地域の人々の役に立っているのか知りたくて、ある時期、高齢になっても多くの歯を残すことが、本当に、意味のあることなのか調べたことがありました。

結果はこうでした。

◎ 歯の多く残っている人ほど

視力の衰えが遅い
聴力の衰えが遅い
体のバランスがよい
脳の萎縮が少ない
要介護の人が少ない
アルツハイマー型認知症の人が少ない
お医者さんの医療費が少ない
ご自分で出歩ける人が多い
ご自分を健康だと思う人が多い
高齢になればなるほど食べる楽しみは増す

この結果は驚くべきものでした。

これを見て、私は、私の診療の全てを『高齢になっても多くの歯を残すこと』

のために費やすことに決めました。でも、すでに多くの歯を失っていらっしゃる人もいます。

そういう方々には、『適切な治療で口腔機能を復活させ、それを高齢まで維持すること』で同様の効果を得られるようにしようと心に決めました。

さて、『高齢になっても多くの歯を残す』ためには、何が必要なのでしょう?

こうした研究は、世界を探しても多くは見つけることができませんが、ひとつ参考となる研究があります。

1972年にスウェーデンで約600名の患者さんを対象に研究は始まりました。

治療後も歯科医院で定期検診を30年間し続けると、歯はどれくらい残るのかという研究です。年に数回の定期検診時には歯科衛生士により、歯の大切さ・歯ブラシ指導・歯科衛生士による機械的歯面清掃・むし歯などのチェック・フッ素塗付が行われました。 

結果が、これまた驚くべきものでした。

開院の精神・山口歯科

下表のように1972年の研究開始時に20歳~35歳だったグループ1の人たちは、30年たった2002年になっても歯の本数は、26.7本→26.3本しか変化しておらず、同様に、36~50歳だったグループ2の人たちも、25.8本→25.1本、51~65歳だった人たちも20.1本→18.3本しか歯が抜けなかったのです!

残存歯数の平均と喪失歯/年

一方、日本の現状は、下表のとおり、40歳~70歳の30年間で実に国民の平均でも15本、歯を失っています。

それに対し、スウェーデンのグループ2の人たち(ほぼ同じ年齢層)は、30年でたった0.7本しか抜けていません

日本では、歯を失う原因のほとんどは、むし歯と歯周病ですが、スウェーデンの研究では、その頻度は、非常に少なく、歯根破折が抜歯の原因のほとんどとなっています。

定期検診をすると、歯が残るという同様の研究結果はほかにも報告されています。

日本の現状

歯の喪失理由

こうしたことから、当院では診療の基盤として、歯科衛生士による定期的なチェックとクリーニングのシステムを整備いたしました。

『定期検診』という言葉は、よく医科で使われますが、歯科の実態をよく反映している言葉は、『定期的なチェックとクリーニング』と言えるかもしれません。

こうしたシステムを平成11年ごろより整備し、現在、約2000名の患者さんが、痛みや不具合がなくても定期的に当院を来院してくれています。(過去3年間で6回以上定期検診のために来院した人数)

わたしたちは、そうした患者さんの期待に応えられるよう全ての患者さんのデータをパソコンで管理し、定期的に再評価することで、少しでも医院としての実力が上がるよう取り組んでいます。

現在、日本全国の歯科医院の数は、コンビニの数より多くなっており、患者獲得のために、定期検診もどきのシステムを導入する医院もあるかもしれません。

正しい定期検診で歯が残るのは研究により明らかですが、そのたびに歯を削っていたり、歯周病的に大切な歯肉縁下のプラークコントロールがされない医院では、おのずと結果は異なってくるでしょう。定期検診はいいよといっておきながら、歯が残らない結果になっては最悪です。私たちが、自院のデータにこだわるのはそのためです。

よりよくありたい、結果を出したいとの思いから、手間ひまかかる作業でも毎日の業務として取り組んでいます。

ここで、当院の2つのデータを示します。

当院を定期的に受診すると、歯が残ります。

子供のうちから定期的に受診すると、3/4はカリエスフリーに育ちます。

メインテナンスの効果

定期的にメインテナンス中の患者さんにおける喪失歯数どとの人数

初診からのDMFT増加

以上のように、当院は、定期検診を診療の基盤においていますが、

(1)『高齢になっても多くの歯を残すこと』

(2)『適切な治療で口腔機能を復活させ、それを高齢まで維持すること』

の2つの目標を達成するために、各年代ごとに以下のような治療目標を定めています。

定期健診

0~20歳;20歳の時点で、カリエスフリー・歯周病も不正咬合もない口腔内を作る

    • ☆ カリエスフリー:治療済みという意味ではなく、全ての歯が一度も削ったことがないこと
    • ☆ そのために、『むし歯の治療』と『むし歯の穴の治療』を分けて考える

20歳以上;遅くとも、初期・中等度で歯周病をストップさせる

    • 急激に進行する侵襲性歯周炎の患者さんを見逃さず、発症予防に努める

既にお口に多くの問題を抱えている;専門医レベルの治療でお口の中を建て直し、定期検診によりそれを維持する

高齢期;常用薬の副作用や、歯周病の進行により、歯の根が出てくるためむし歯になりやすくなります。

    • また、麻痺などで手の動きが悪くなった方も、衛生士によるプロフェッショナルケアにより口腔の機能を永らえる